契約結婚の終わらせかた




おばあちゃんに散々叱られた。


畳の上で正座をしたまま怒られるなんて小学生以来だなぁ。なんて呑気に考える私も、大概懲りてないのかも。


だけど、気分は沈むどころか逆に上昇していく不思議。今度はどんなプリンを食べさせようかな、と私は美帆さんのガラス工芸店「あくあくりすたる」を訪ねた。


ドアを開くと、チリンチリンと涼やかな風鈴の音が鳴る。

その清涼な音色を聞けば、そういえばそろそろ暑くなる季節だなって感じられた。


「美帆さん、こんにちは」

「あら、碧ちゃんいらっしゃい~ちょうどお茶が入ったところだよ」


美帆さんが手招きするから、遠慮なく縁側みたいな突き出した板に腰を下ろす。保冷バックから、ガラス容器を取り出して美帆さんに渡した。


「今日は野菜プリンです」

「わ~こりゃまた美味しそうじゃん。食べよう食べよう」


美帆さんはプリンをお皿に載せスプーンと一緒に持ってきてくれた。同じ板に並んで腰掛けると、さっそく一口食べて「美味い!」と叫ぶ。


「なにこれ? ホントに野菜が入ってんの? 普通のプリンより美味しいじゃないさ」

「そうですか? まずいって言う人もいますけど」

「そりゃ、そいつの味覚がオカシイだけだって! マジうま~これが市販ならリピしちゃうんだけど」


パクパクとプリンを食べる美帆さんのひと言に、ハッと目が覚める思いをした。


(味覚がおかしい……伊織さんって味覚障害みたいなもの?)


急に浮かんできた疑惑に、浮かれてた気分が萎むのを感じた。


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