いきなりプロポーズ!?

 どうやら私はすごい人と知り合ってしまったらしい。同時に達哉が遠い人に思えた。すごい分だけ凡人の私とは離れてる。


 インターフォンが鳴る。清掃のスタッフかと思ってドアを開いて出迎えるといたのは達哉だった。真っ直ぐに私を見下ろして、ふう、と息を吐いた。


「愛弓、さっきは悪かった」
「別に」
「やり過ぎたとは思ってるけどよ」
「だから別に」


 素直に謝られて反応に困り、私は下を向いた。達哉の手には白い手提げ袋、中には箱が入ってるのか袋の上からは角が出ているのが見えた。達哉がそれをずいと私に差し出したので、私は両手で受け取る。箱は温かかった。


「飯、食い損ねただろ。レストランで詰めてもらったから。食えよ」
「あ、うん」
「飯のことになると素直だよな、ほんとに」
「うるさい。とりあえず中に入れば」
「お邪魔します、てか、俺の部屋なんだけど」
「私の部屋」


 入口からすぐのミニカウンターにどかりと座る。私はキッチン側に回ってプレートを出した。箱を開けて中身を乗せる。パンケーキ、ベーコン、チーズ。カップに別添えでスープも入っていた。カウンターに乗せると向かいにいた達哉と目が合う。私はスツール側に回るふりで目を逸らした。二つ空けてスツールに座る。昨日と同じ席。


「聞いてくれるか? 俺、サッカーやってるんだ」
「鈴木さんから聞いた」
「そっか」
「すごいね、サインお願いされたり、あんなにモテモテで」
「モテるためにサッカーしてんじゃねえし」
「じゃあ何のため?」
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