いきなりプロポーズ!?
 部屋にもどってミニキッチンに入る。昨日達哉と買い物した食料品を漁った。バゲットが半分、口のあいた炭酸水が1本、冷蔵庫にクリームチーズがあって、それらをカウンターに並べた。バゲットは乾燥してパサパサしていて、炭酸水は少し気が抜けていて、クリームチーズは冷蔵庫に入っていたからカチカチで。背に腹は代えられない。ひとりスツールに腰掛けて口に放り込む。こんな味気ない食事も達哉がいたらきっとごちそうだったと思う。寂しくて手持無沙汰で、私はスマホをかばんから取り出した。

 ネットで検索した。キーワードは“サッカー”、“コンシェルジュ”、“イギリス”、“新條達哉”。それは数千件もヒットした。そのほとんどはグリーンと白の縦ストライプのユニフォームを着た達哉の画像だった。パスをつないでる場面、ガッツポーズをする場面、芝に座りこんで頭を抱える場面、チームメイトと円陣を組んでいる場面。本当にプロのサッカー選手だった。ウィキにも達哉の情報が載っていたから、相当有名な選手なんだろう。鈴木夫人が嘘をついてたとは思ってないけど、同姓同名の誰かと間違ってるんじゃないかと軽く考えていた。画面の中の達哉は表情もはっきりしている。画像にも共通して言えるのは達哉の表情は輝いていた。成功したシーンでも失敗したシーンでも。どれもこれもまぶしいくらいに輝いているのだ。


「なんか、かっこいいな。達哉」


   
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