いきなりプロポーズ!?
負け犬……。自虐的に言った達哉の顔をちらりと見る。今の達哉はさっきスマホの画面で見た達哉とは別人だ。イケメンには違いないし、スポーツマンに違いないんだけど、どこかこう、覇気がないように見えた。すこし大人の哀愁を漂わせている。世間なんてそんなもんだと未来をあきらめてしまった人。たとえば志望校に落ちて失意のどん底にいる浪人8年目の浪人生とか、婚カツのパーティーや見合いの類で10連敗した女の子とか。これまでずっとがんばってきたのに、未来はあるって信じてきたのに、それでも駄目だったときの喪失感。本人はきっとすごく落ち込んでもう駄目だとか思ってるんだろうけど、まわりからみたらまだまだチャンスはあるじゃん?って思う。パンケーキを一口放りこんで私はぎゅうっとフォークの柄を握りしめた。
負け犬なんかじゃない。もっと輝いてほしい。もっとなにかを目指してほしい。ほら、鈴木夫人も言ってた。人は何か夢中になれるものがなきゃダメだ、って。
私は握っていたフォークをカウンターに置いた。
「達哉、なんかおかしい。なに拗ねてるの」
「何が」
「もうサッカーできない、俺ってかわいそうでしょ的に同情を買ってるわけ?」
「は? なんだよ、それ」
「私はサッカーなんて何にも知らないけど、怪我を直せばまだ試合に出るチャンスはあるんでしょ? カズだってまだまだ現役で試合してるのにまだ30にもなってない達哉が何をため息ついてるわけ? なっさけない!」
「てめえ」
「それともJ1じゃ不満なの?」
「補欠からだぜ?」
「補欠の何が悪いの?」