いきなりプロポーズ!?
「はあ?」
達哉は立ち上がった。達哉の大きい目が座っていた私を睨んだ。大柄なクマ男ににらまれるのはちょっと怖い。でもこのぐらいのことで怯んではいられない。達哉にかっこいい達哉でいてもらいたい。
カウンターを両手でバンと叩いて勢いづけた。私も立ち上がる。
「なによ!」
「出られるかどうかも分かんねえのに練習しろっていうのかよ」
「そうよ!」
「レギュラーに復帰できる確率は微々たるもんだぜ? それで復帰できなかったらみじめだろ」
「可能性がゼロでないなら、やらないでどうするの!」
「そんなのお前に言われたくねえし!」
「誰に言われたらやるの? 親? 兄弟?近所の怖いおじさん? それとも……」
言いたくないけど、認めたくないけど、この人の名前が一番効くと思って言葉にする。
「舞さん?」
達哉はさらにキツいまなざしで私をにらんだ。もう本気で怒らせても構わない。明日で達哉とはお別れなんだから。もし、達哉の将来に役に立てるならそれで上等ではないか。
怖くて握ったこぶしが震える。達哉はプイと視線をそらした。後ろの窓のほう。雲は分厚くてまだ夜明け前みたいに暗かった。そしてふうと息を吐くと達哉のいかつい両肩が下がった。そして短い前髪をかき上げて足元を見つめている。