いきなりプロポーズ!?
「うるせえよ、お前」
「すいませんね!」
「くそっ。本当に可愛くねえやつ!」
「はいはい。自覚はありますから結構です。貧乳のチンチクリンで。どうせ舞さんとは比べものにならないくらい女子力ないし」
「そんなことない。舞も貧乳」
「え?」
「言っただろ。身長158センチ体重45キロ。壁だぜ、壁」
「だって達哉、巨乳が好きじゃないの?」
「誰がそんなこと言ったかよ」
「言ってないかもしれないけど……」
「お前さ」
足元を見ていた達哉はちらりと私を見た。何か言いたそうに唇を少しだけ開いて、じっと私を見ている。おもむろに右手を上げて私の顔に近づけてくる。手のひらで頬を包むようにして、親指で下唇に触れた。触れるか触れないか、指を浮かせ気味にして。伏し目で私を見る。
「お前こそ……」
「な、なに」
私が唇を動かしたことで達哉の指に当たって、私の脳は反応した。昨夜のキスを思い出してしまう。優しい、触れるだけのキス。演技のための行為なのは分かっているけど、私の心臓が痛いくらいに跳ねる。鼓動が聞こえてしまったらどうしよう。
「お前こそ……いや、なんでもない」
「ずるい。言いかけてやめるなんて」
「じゃあ言ってやるよ。お前、キス、下手くそ」
「ええっ、そこ?」
「色気もくそもねえ子どものキス! 次の彼氏にはちゃんと仕込んでもらえ」
「だって動くなっていうから」
「動いてもいいなら、もっといいキスができたってことか?」
達哉は指を滑らせる。何度も何度も私の下唇をなぞる。じっと私の瞳を覗き込むように見つめながら。
突然、ぱっと指も手も離れた。そして鼻で笑った。
「ほんとに色気ねえな」
「ほっといてよ」
達哉は私から離れて窓辺へ歩いていく。