いきなりプロポーズ!?


「はああ? レディ? レディってのはああいうのを言うの」


 そう言うと奴はちらりと右に目をやった。赤帽男の視線の先には宿泊客と思われる欧米人の女性が歩いていた。ボッキュッボンのナイスバディ、ブロンド。ぱっつんぱっつんな白いシャツ、バレーボールのようなたわわな胸をボタンはち切れんばかりにゆさゆさと自慢げに揺らし、ミニスカートからはみ出る白い太腿と張り出した腰を横に振りながらロビーを横切って行った。思わず私は視線を自分の胸元にやった。なだらかの丘からは太腿の付け根や床の絨毯の模様までくっきりはっきり見渡せた。


「お前みたいな貧乳のチンチクリンは女じゃねえよ!」


 貧乳という自覚はある。でもそれを他人に指摘されるほど腹立たしいことはない。


「ひど……。神山さん、ここに空きがないなら他のホテルは?」
「もしかしたら空いてる可能性もありますが、そうなると食事やオプションのオーロラツアーのとき不便だと思われます。そのたびにこちらのホテルに移動していただくことになりますし」


 神山さんは本当に困ってるみたいだった。でもこんな奴と同じ部屋なんて。女性ならともかくも男だ。


「いいですよ」


 ぼそり。赤帽男は言った。どう言うつもりなのか、私は向かいの不躾な男をにらんだ。奴も私を見下すようにらむ。顎をしゃくり出して、偉そうに!


「どうせこんなチンチクリン、女じゃねえし」
「ええ? 私はイヤ! 同室なんてぜーったい認めないから」
「お前だって俺のこと男だなんて思ってねえだろ? なら問題ないじゃんかよ」
「そんなこと言ったって!」
「なに? じゃあ、俺のこと男として意識してんの? 案外可愛いなお前。へえ? あのブロンドに対抗意識燃やしてるわけ、お前」
「お前じゃなくて真田亜弓! お前お前ってアンタの所有物じゃないのに」
「お前こそ。俺は新條達哉って名前があんの。じゃあ、同室でいい? 変な妄想してんなよ。誰が貧乳を襲うかよ。俺にも選ぶ権利はあるつうの!」


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