いきなりプロポーズ!?
*-*-*-*-*
7時間のフライトのあとアラスカ・フェアバンクス国際空港に到着したのは現地時間の朝9時。しかしまだ夜は明けていない。北極に近いこの地に太陽が顔を出すのはこれからだ。東の地平線あたりが薄ぼんやりと黄色に色づいている。車輪が滑走路について轟音を鳴らし、機体は小さな空港に横付けされる。シートベルトを外す。窮屈な座席で寝たから体のあちこちが痛い。となりで赤帽子の男は両手を真上に伸ばし、その大きな体で存在感たっぷりに伸びをしながら大あくびをした。機内を脱出すればこんな不躾な男から解放される。
チャーター便は観光目的だと分かっているので何も聞かれず写真と拇印をとって入国審査は終わった。私が申し込んだKKBツアー以外の他の旅行会社のお客さんも乗り込んでいて、KKBツアーのすべての乗客が審査を終えるのをぼうっと待っていた。もちろん赤帽男とは別行動だけど、視界の隅にちらちらと赤いポンポンは揺れているのが見えて、そのたびに私はイラっとした。これから先、毎日こんな感じなのかと先が思いやられる。はあ。
KKBツアーの青い旗を掲げた現地係員の男性のもとに全員が集まったときには1時間半も経っていた。神山さんという30代後半の物腰の低い男性に一行は率いられて、空港の入口に停められたチャーターバスに乗り込んだ。市内にあるホテルを目指す。バスの座席は自由、奴は先に乗り込んで後ろの座席でふんぞり返っていたので私は係員の神山さんのすぐ後ろの席に座った。でも神山さんはそんな私をいぶかしげに見ていた。女ひとり旅がそんなに変なんだろうか。私はちょこんと頭を下げて、よろしくお願いします、と小さな声で言った。
ところが。