いきなりプロポーズ!?
その途端に達哉の手は止まった。首裏にかかっていた達哉の息も消えた。そして私の足元にはらりと白い紙が落ちた、神山さんにもらった封筒だ。
「あ……!」
私が屈んで拾うが早いか、先に手を伸ばして拾ったのは達哉だった。達哉はその封筒に書いてある文字を読む。
「“バー・カシュカシュ”? なんだよ、これ」
「招待されたの。KKBツアーの持ってる会員制のフレンチ。今回の不手際のお詫びだって」
「じゃあ俺の分は?」
「達哉には別の品物を用意してるって言ってた」
「ふうん? お前だけか。で、行くのかよ」
「うん。だってお通しでマカロンが出てシャンパンで、桜の一枚板がお洒落なんだって。優しい神山さんがお供してくれるって」
封筒を見ていた達哉は視線を上げて私の顔を見つめた。ギロリときつく私をにらむ。そして右手を上げると私の肩を強くつかんだ。ぐいと引かれ、私の体はくるりと横を向き、そのまま通路の壁に寄せられる。達哉は壁に手をついた。
「か、壁ドンですか」
背中に当たる壁、目の前には達哉の顔。真剣なまなざしに焦る。達哉は壁に手をついたまま、私を見つめる。至近距離だ。というかあまりの近さにさっきのキスを思い出してしまう……。心臓は飛び出しそうに鼓動して、唇は熱くなる。
「い……」
達哉が口を動かした。