いきなりプロポーズ!?

「……行くなよ」


「え?」
「誘われてんだよ」
「そうよ、誘われたもん、お詫びだし」
「そうじゃなくて」


 達哉は伸ばしていた腕を曲げて肘をついた。さらに顔は近付いて目の前には唇。


「や……」
「お前、ホントに鈍いな。神山の下心、ミエミエだろ。やめろよ、あんな奴」
「べ、別にマカロンのお通しでシャンパン飲むだけだし」
「そんなの手口だろ、飲ませてホテルに連れ込む気だろ。ツアコンってチャラい奴多いんだよ」


 次の瞬間、達哉の顔が離れたかと思ったら、ゴンと後ろの壁が音を鳴らした。私の目の前には達哉の肩。頭突きをしたらしい。私の体に覆いかぶさるように奴は立っている。


「達哉……?」


 きっとこんなときは背中に手を回せばいいのかもしれない。でも達哉は私のことはなんとも思ってないだろう、ただ間抜けな女が目の前にいるからアドバイスしてるだけだ、って。旅行が終わればきっと会うこともない。でも、もしかしたら達哉は……。

 私は思い切って腕を上げた。背中に手を回そうと思った瞬間、奴は離れた。そして私を斜めに見下ろし、ふん、と鼻で笑った。


「あーもう、お前と話してると頭痛もよおすわ!」
「そ、そりゃあ、そんだけ頭突きすれば当然じゃない」



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