彼に惚れてはいけません

「どうぞ」

「ありがとう」

淹れたてコーヒーがソファの横のサイドテーブルに置かれた。

「ここにずっと住んでるの?」

まるで引っ越してきてすぐのような、清潔感。

「ああ、ずっとここ。綺麗好きなんだね。私の部屋なんて絶対見せられないよ~!もう散らかり過ぎててさ~」

あまりにも静かだったので、私は少し無理をして明るく話していた。

この部屋には時計もない。
カレンダーもない。

「いいよ。俺は、散らかった部屋の方が好きだから。でも、ひとりだと全然散らからないんだ。由衣が汚くしてくれたらありがたい」

「何それ~!本気で?私、散らかすのは得意だよぉ?」


いつもの吉野さんと違う感じがして、緊張感が消えなかった。

言いたいことを言える関係だったのに、今の私はこれ以上踏み込んではいけないんじゃないかとビクビクしていていた。


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