彼に惚れてはいけません

ベッドの上で愛を語る

―ベッドの上で愛を語る―


「腕、しびれるんですけどーーー」

顔を横に向けると、すぐそこに吉野さんの顔がある。

「んふふふ」


終わってからベッドに運ばれるという映画ではあまりない展開だった。

「気持ち悪い!離れろ!」

「腕枕、幸せ~」

夢にまで見た腕枕の至福のひととき。


「さっき言ったこと、全部忘れろよ」

ぶっきらぼうにそんなことを言う吉野さんだけど、ちゃんと伝わる。

腕枕をしていない方の右手で、私の手をぎゅっと握ってくれている。

不器用で照れ屋な吉野さんの最大の愛の示し方は、隣にいるってことなんだと思う。

好きだって言ってくれなくても、私はいつも吉野さんを近くに感じていた。
彼女なんていらないって言ってたけど、私はそれでもいいからそばにいたかったんだ。


「忘れないもん」

「忘れろ!忘れないと、さっきのお前の悲鳴、リピートすんぞ」

「それだけはやめて~!」


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