彼に惚れてはいけません

「お前が旅行で仕事何日も休むとは初めてじゃない?彼氏、できたの?」

どう答えようかと迷っていると、中村さんが続けた。

「俺、別にお前のことなんて後輩としてしか見てないし、お前が誰と付き合ってもいいんだけどさ。この前、見ちゃったんだよね。佐々木が男とお茶してるとこ。それからなんつーか、ムカつくんだよ。俺のこと知ろうともしないで、他に男作ってさ」

理解不能なことを言い出す中村さんだったけど、なんとなくわかる。

どうでも良かったけど、他の男と一緒にいる私を見て、惜しくなって・・・・・・って感じ?

やっぱり、あのカフェで、中村さんに見られてたんだね。

「あの人と付き合ってるんです」

この人にはハッキリ言わないと、だめらしい。

私は、仕事を始めながら、答えた。

「絶対騙されてんぞ、お前」

「どうして、そんなことわかるの?」

「だって、年上っぽくなかった?お前みたいなガキに本気になるかなぁ」

この人、性格悪いな。

「じゃあ、そんなガキに中村さんはどうしてかまうんですか」

「それは、俺が守っててやらないと痛い目遭うからだよ」

これから先も同じ会社で働く仲間として、気まずくはなりたくない。

言い返したい気持ちをぐっと我慢して、にっこり笑う。

「そうですか。じゃあ、失恋して泣いてるときに、なぐさめてください」

中村さんが何か言おうとした時、オフィスのドアが開き、上司が入ってきたので、そのままお互いに仕事を始めた。



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