彼に惚れてはいけません
中村さんのことを、どうも思っていないから、何を言われてもまったく心が動かなかった。
でも、よくよく考えてみる。
中村さんは私に好意を持ってくれていた、とする。
それなら、今、中村さんはとても悲しくてどうしようもない気持ちになっているんじゃないか。
人の気持ちを考えること、それはとても大切なこと。
元々中村さんと私は何もなかったから別にいいんだけど、中村さんのさっきの必死な顔を思い出すと、ほんの少し胸が痛んだ。
それは、自分に重ねてしまったから。
もし、吉野さんに片思いをする私が、吉野さんにあんな風に言われたら・・・・・・つらすぎる。
吉野さんを好きになり、本当に人を愛するってことを知ってしまった。
そうすると、いろんなものの考え方ができるようになった。
自分だけ幸せになれたらいいという考えでは、幸せになれない。
吉野さんと出会い、話を聞いて、本当に私は変わったと思う。
私はポストイットにこう書いた。
“今日仕事終わったら少しだけお茶しませんか”
そして、中村亮司の机に貼った。
キョトンとした顔で私を見上げた中村さんは、それを読み、かっこつけて笑った。
ちゃんと話そう。
今の気持ちを。