彼に惚れてはいけません
「俺も食べたい。由衣も食べたい。かっこつけて、全部由衣にあげるのは簡単だけど、それじゃあ何年も続けてるとだんだん、俺も食べたくなってくる。だから、俺も由衣も食べて、半分だけどそれで満足。そういう無理のない関係が、結婚生活には大切ではないか、と分析してみた」
「すごいっ!吉野さん、ほんとにすごいよ。その通りだね。無理していい顔してたら疲れてくると思うんだ。本当の自分を見せながら、相手のことを大切に思っていけば、ずっとずっと仲良しでいられるんじゃない?」
口角を上げた吉野さんが、ニヒルに微笑んで、私の頭を撫でた。
間違いなく、キュンキュンしちゃうよ、これは。
「ふたりでなら、迷ってもいいし途中で休憩してもいい。俺達らしく、普通じゃない夫婦でいいと思うんだ。俺の心の傷を癒そう、なんて考えなくていいからな。俺は、由衣のおかげで、もう傷なんてないから」
吉野さんは、私の心が見えるのかな。
いつも、不思議なくらい全部バレてる。
「うん。わかった。自然体でいこうね。吉野さんの生き方そのものが自然体で、そこが好きなんだよ」
「俺が自然体?俺、全部計算だけど?」
なんて笑う吉野さん。
いつも吉野さんからはホンワカした空気が溢れてるんだよ。
周りの人をふわっと包み込むその魅力、自分では気付いてないのかな。