彼に惚れてはいけません
「それでは、ごゆっくり」
私と吉野さんは、目を合わせ、乾杯した。
「ねぇねぇ、半熟卵じゃんけんしない?」
「何、それ」
「私も、吉野さんも半熟卵狙ってるでしょ?だから、じゃんけんで勝った方が食べるの」
「バカだな。そんな必要ない」
と優しく言うので、私にくれるのかと思いきや・・・・・・
「俺が頂き~」
と半熟卵を口へ。
「ひどい!!」
「ふふふ」
唇を黄色く染めた吉野さんは、
「はんぶんこ、だろ?」
と、ドロドロになった半熟卵を私の口へと運んだ。
「おいひいね」
「ああ、おいしい」
「はんぶんこ、いいね」
「うん。多分、結婚ってこういうことなんじゃないかな。俺は、まだちゃんとした結婚をしたことがないから、結婚の正解もわからないし、由衣と同じスタート地点にいる。人それぞれ違うし、わからないけど・・・・・・俺は、こういうことかなって思う」
唇をペロっとなめた吉野さんを見つめながら、半熟卵ひとつでそういう発想ができる吉野さんに惚れ直していた。