彼に惚れてはいけません

「何、泣いてんだよぉ?」

頬にキスをされて、私は我に返る。


これは初めての経験だった。

キスの途中で自分を見失い、夢の中にいるような感覚。

涙を流していることさえ、気付いていなかった。

幸せすぎて、泣いていた。


「吉野さぁん」

私は吉野さんに抱きついた。

「どーしたんだよーー!由衣」

「吉野さぁぁぁぁん」

どうして泣いているのかはっきりした理由はわからなかった。

ただ、幸せだった。

「だからぁ、何?俺、舌入れすぎた?」

「ふふふふふ。違うよ。吉野さんのばかぁ~」

「え?何?」

戸惑う表情もまたかわいくて、本当に好きで好きで仕方がないと思った。

その涙だったのかもしれない。

こんなにも大好きな人に出会えた。

そして、大好きな人と最高のキスをしている。その現実が嬉しくて、泣いてしまったのかな。


< 76 / 180 >

この作品をシェア

pagetop