御曹司さまの言いなりなんてっ!
複雑なワケあり上司との恋愛なんて前途多難に決まってるのに、そんなこと気にならなくなってしまうほど、私はこんなにも幸せなんだ。
だからできることなら、この幸せがどこまでも続くように努力したい。
そして、少しでも多く部長にもこんな幸せを感じて欲しいと願っている。
「あんた、さっきからなにしてんだ?」
「うわっ!?」
いきなり頭の上から声をかけられ、私は盛大に驚いた。
見ればそこには、怪訝そうな顔をした作業着姿の相馬さんが。
「あ、相馬さん。おはようございます。昨日はありがとうございました」
「なに床ばブッ叩いてんだ? あんたまだ、頭の具合悪ぃんだか?」
「い、いえ、頭は大丈夫です」
「んだば、行くぞ。一之瀬さんからあんたの面倒ば見るように頼まれてるからな」
こんな早朝に来たせっかちな相馬さんに急き立てられ、私は朝食をとる間もなく古民家を後にすることになった。
でも同乗させられたトラックには、ちゃーんと私の分のおにぎりとお茶が用意されていた。
「わいのカカァが作ったんだ。遠慮しねえで食え。食うモン食って、飲むモン飲んで、しっかり元気ば出さねばなあ」
私は、ありがたくて頭が下がる思いだった。
たぶんこれ、昨日倒れた私の体調を心配してわざわざ用意して下さったんだろう。
本当にこの村の人達って親切な方達だと思う。
トラックに揺られながら、何度もお礼を繰り返して私はおにぎりを食べた。
塩味がキリッと効いた、人の手が握った自然な三角形のおにぎりは、とてもとても美味しかった。