御曹司さまの言いなりなんてっ!
『周囲を見返したいの!? それとも兄を負かしたい!? ……バッカみたい! あんたがあんた自身として生きていくことに、なんの勝ち負けが必要なのよ!」
『…………』
『これがあんたの真に望む人生なら、勝手にすればいい! ただしケジメくらいはつけなさい! 他人に迷惑かけ通しのまま、マトモに生きていけると思うな! この、甘ったれボンボン!』
言いたいことを言い切った私は、息切れを起こしてしまった。
こめかみに青筋立ててゼイゼイしている私を、専務は怒りもせず、部屋から追い出しもせず、しばらくの間黙って見ていた。
そして………。
「『うん』……って、言いましたよ。彼」
「『うん』?」
「はい。コクンと頷いて、素直に予算を出してくれたんです。急だから少ししか出せないって言われましたけど」
「直一郎が……」
きっと専務は専務なりに、今回の件で思うところがあったんだ。
部長は複雑そうな顔をしているけど、本当は弟の抱えるコンプレックスも、微妙な心境の変化も、理解しているんだろうと思う。
お互い、なんといっても血の繋がった兄弟だし。
苦労人同士でもあるし。
「専務って、まだ子どもなんですよ。成長を見守ってあげる人が必要なんだと思います」
「お前、なんでここまでするんだ? もう退職したんだから関係ないだろ?」
「放っておけませんよ。なんったって私は『遠山の金さん』ですからね」
「でもお前は……」
「おーい成実ー。お待たせー」
「部長、遠山さん、遅れて申し訳ありません」