御曹司さまの言いなりなんてっ!

 薄暗い道の向こうから、男女が肩を並べてこっちへ歩いてくる。

 私は大きく手を振って彼らに応えた。


「おーい瑞穂! 牧村さーん!」

「あれは牧村か? どうしてここに?」

「自主的にお手伝いを申し出てくれたんですよ。ふたりとも」

「…………」

「つまり、部長はひとりぼっちじゃないってことです」


 今までずっと何をするにもひとりぼっちだった部長は、今回の件も、全てひとりで抱え込もうとした。

 そうすることが当然であるかのように。

 そして私はそんな彼を、置き去りにしてしまった。

 だから来たんだ。ここへ。

 私はどうしても来たかった。部長の隣に。


「あれえ、もうみんな揃ってるんだねえ!」


 元気な明るい声に振り向くと、そこにはお祭り用はっぴを羽織った婦人会の奥様方がぞーろぞろ。

 おなじみの面々がそれぞれ大きな紙袋を手に持って、上機嫌でこっちへ向かって来る。

 小林さんの息子さんが母親へ向かって威勢の良い声を張り上げた。


「おい母ちゃん! 遅ぇーぞお!」

「あれま、あんたも来てたんかい?」

「中の準備、母ちゃんに頼むわ。任していいか?」

「うんうん、任しとき!」


 息子にヒラヒラと手を振りながら、笑顔の小林さんが近づいてくる。

 部長は不思議そうに小林さんを迎えた。


「小林さん? 婦人会の皆さんもお揃いでどうなさったんですか?」

「成実ちゃんと相談してね、今日はこの古民家で婦人会の手料理を、村のみんなに大盤振る舞いしようってことになったのさ」
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