御曹司さまの言いなりなんてっ!
「そこのキミ」
でもそれじゃ、この気になり様はなんなの?
どうしても、こう、引っ掛かってたまらない『何か』が私の心の奥にある。
なぜ? なんなの? いったいどうしたの?
……ああダメ。考えても分からない。ノドのところまで出かかっている気がするんだけど。
「キミ、そこのキミ」
せっかくテストのヤマが当たったのに、一夜漬けで覚えた年表が、寝不足のせいでどうしても思い出せない時の感覚にすごくよく似ている。
絶対に絶対に、答えは分かってるはずなのよ。
なのに出てこない。ああぁぁ、残念感がハンパない!
「おい、聞いてるのか? キミ」
眉間を指で押さえながら、目を瞑って懸命に集中している私のヒジを、隣の瑞穂がバンバン叩く。
なに? ちょっといま考え事してるんだから静かにしてくれない?
「おい。さっきから眉間の肉を指で引っ張っているキミだキミ」
…………。
はい?
「キミ、名前は?」
顔を上げた私の目を、部長様が真っ直ぐ見て、そう質問した。