御曹司さまの言いなりなんてっ!

 私はもう、その場にヘナヘナとしゃがみ込んでしまいそうだった。

 やっぱり……やっぱり私の認識は正しかった。

 賭けてもいい。こいつは絶対に、直系ボンボン3代目に違いない。

 ああ、なんの因果なの? これってボンボンの呪い?

 あの憎っくき社長をずーっと呪ってたから、呪詛返しでもされたのかしら。

 おのれ社長め。やりおる。

 それともひょっとして、これは私が見ている悪夢?

 きのう食べた茹で卵が痛んでて、うなされてるとか。

 
「駐車場に車を待たせている。急げ」


 そう言って部長は、近場のエレベーターの扉の前で立ち止まった。

 先に並んでいた社員たちが驚いた顔で振り向き、居心地悪そうな様子で、さり気なく別のエレベーターに向かって移動する。

 普段の部長は、きっと直通エレベーターしか使用しないんだろう。

 彼らは一般エレベーターの前に平然と立っている部長様と、変な低級霊にでも取り憑かれたような私との組み合わせを、さも珍しそうにチラチラ眺めていた。
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