御曹司さまの言いなりなんてっ!
エレベーターの扉が開いて乗り込み、部長と私は地下の駐車場で降りて、靴音をカツカツと響かせながら一緒に移動する。
もうあれこれ質問するのも、この状況を私の常識の範囲で理解しようとするのも、諦めた。
だってしょせん、この人は恐怖の直系ボンボン三代目。
悪いことって続くって言うもの。トランプのババ抜きで、連続してババ引いちゃったようなもんだわ。
あるのよ。こういう事って。これも我が身の不運と諦めるしかない。
夢遊病患者のようにフラフラと部長の後について行くと、駐車場の一角に、ひときわデカくて黒い高級車が数台並んでいるのが見えてきた。
そのうちの一台に寄り添うように、ふたりの男性が並んでいる。
ひとりは中年の男性。もうひとりは私より少し年上程度の、メガネをかけた男性だった。
彼らは私達が近づくのを待ちかねていたように、丁寧に腰を折ってお辞儀をする。
「一之瀬部長、お車の用意ができております」
「待たせたな。急いでくれ」
「承知いたしました。購入する店は私の判断でよろしいでしょうか? ご希望の店がございますか?」
「任せる」
部長と若い男性の会話を聞きながら、私は目の前の車に目が釘付けだった。
車に全く興味も知識もない私でも、ひと目で分かる事実がある。
すっごく高そう……。
大きくて真っ黒な車体は曇りひとつ無く磨き上げられ、表面に水の膜でも張っているのかというほどツヤツヤ光っている。
ヘタな人間よりも威風堂々とした風格が感じられた。