御曹司さまの言いなりなんてっ!

 夫人の目が、正体不明の敵を前にした動物のように危険な光を放ち始めている。


「お母さん、彼女は私の一存でチームに任命したんです」


 部長が、私を社長夫人から守ろうとするかのように会話に割り込んできた。


「特別な抜擢ですが、さきほどお祖父様の承諾もいただきました」

「直哉さん自身が任命を? わざわざお祖父様から直々の承諾もいただいたの?」

「はい、そうです。ですからこの件に関しては何の問題もありません」


 だから、もう文句は言うな。

 そう言わんばかりの部長の、横槍を寄せつけまいとする黒い瞳が、真っ向から社長夫人を見おろしていた。

 対する夫人は、乙女のように純な笑顔で背の高い部長を見上げている。

 でもその微笑みとは裏腹に、全身から強烈な攻撃モードが発散されていた。


「我が社にとっても特別なお仕事に、彼女をどんな理由で抜擢したの?」

「彼女はこの仕事の大きな力になってくれると私は思います。詳しい事情は説明できませんが」

「説明できないの? どうして?」

「少々、複雑ですので」

「あらあら、それはちょっと困るんじゃないかしら?」
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