強引上司の恋の手ほどき
***
そして迎えた社員旅行当日。

新幹線で向かう今回の目的地は、海のそばにある有名な温泉地だ。

私は集合時間に遅れない時間に駅に到着した。

社員の集団を発見して、私が近づくとすぐに中村くんがきがついて私の方へと歩いてきた。

「おはよう。千波」

私が持っていた一泊分の荷物の入ったボストンバックを持ってくれる。

「ありがとう。でも自分で持てるよ」

別れ話をしようと思っているのに、優しくされると罪悪感のようなもの芽生える。

「いいって。今日は久しぶりに会えたんだから、これくらいさせてよ」

そう言って、集合場所に向かってしまう。

ひとり気まずさを感じながら、新幹線に乗りこんだ。

座席は美月さんの隣だったが、通路を挟んですぐに中村くんがいる。

「千波、席変わろうか?」

美月さんが気を利かせて訊いてくれた。

「いえ、大丈夫です」

私は、美月さんには中村くんと別れようと思っていることを告げた。細かいことは聞かれなかったけれど、なにか困ったら相談にのってくれると言ってくれた。それだけでもありがたい。
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