強引上司の恋の手ほどき
「菅原、ガムちょうだい」

私と美月さんの座席の間から手が伸びてきた。

「びっくりした! もう驚かさないでください」

「なぁ、ガムくれって」

「千波、うるさいから課長に早くガム渡して」

美月さんが冷たく言い放つ。

「わかりました」

相変わらずの言い方にクスクスと笑い声をあげながら課長にガムを渡した。

「サンキュー。菅原が前の席で安心した」

顔は見えないまま、後ろからの声に答える。

「ほら俺、規格外に足が長いだろう。だから前の座席蹴っちゃうんだよね。先に謝っておく」

「そ、そんな。やめてください!」

「仕方ないだろう。俺の足はこれ以上短くならなんだから」

「アホくさ。千波ももう課長なんか相手にしなくていいよ」

背中から「ひでー」という声が聞こえてきて、私はまたもや笑ってしまった。

ふと、中村くんの方をみるとそんな私たちのやり取りを冷やかな目で見ていた。

私と目が合うと、取ってつけたような笑顔を浮かべたがその態度に違和感を覚えた。

そんな私たちを乗せて、新幹線は目的地をめざし動きだした。
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