強引上司の恋の手ほどき
「よくがんばったな……今日も、これまでも」

課長の言葉で私の散々だった“はつカレ”の思い出が報われた気がした。

付き合っていた相手には否定されてしまったけれど、課長が私の努力を認めてくれた。

「でも上手くは行きませんでした」

「でも、お前はよく努力してたと思う。中村とはあわなかっただけだ」

「そうでしょうか?」

じんわりと我慢していた涙が滲んできた。今までのんびり過ごしてきたせいか、今まであんなふうにストレートに敵意をぶつけられたことがなかった私には、やはり今日の中村くんの言葉は強烈だった。

涙を流さないように、ぐっと奥歯を噛みしめる私に、課長が明るい声をかけてくれる。

「俺がそうだって言ってるんだから、そうなんだよ」

根拠のない話だけれど、信じられる気がした。いや、信じたいんだと思う。課長の言葉を。

中村くんのためには、もう泣かない。

「今日は助けて頂いてありがとうございました。私ひとりだったらもっと傷ついていたとも思います」

もしかしたら、また言いくるめられて別れることができなかったかもしれない。今頃声をあげて泣いていたかもしれない。今、傷ついていても泣かないでいられるのは課長のおかげだ。

「でもよかったんですか?」

「なにがだ?」

「中村くん、課長が私のこと好きだって勘違いしてましたよ」

「あぁ、そのことか」

そのことかって……結構大事なことだと思うんだけど。

「別に、そう思わせておけばいいだろ」

「でも、それじゃあ……」

大西さんのことはどうするんですか? そう聞こうと思った。
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