強引上司の恋の手ほどき
ワインと前菜が運ばれてきて、ふたりで乾杯をした。よく冷えた白ワインは飲みやすくて、それがきっかけでもやもやしていた気持ちがほぐれる。

食事も評判通り美味しくて、中村くんとの会話もいつもどおり楽しい。

デザートを食べ始めたころに、ふと彼が大阪支社にいたことを思い出して聞いてみる。

「そういえば、大阪支店の経理の方ってどんな人?」

「え? どうしたの急に?」

驚いた様子で中村くんのデザートを食べていた手が止まる。

「いや、だたちょっと興味があって聞いただけ。最近少し数字があわないことがあって、担当が変わったのかなぁって」

どうしたんだろう? なんとなく聞いただけなのにそんなに驚かなくても。

「あぁ。ごめん。なにか仕事でトラブルがあったのかと思って。俺の知ってる限りでは大阪支社の経理担当はベテランの人だよ。でも派遣社員の人もいるから間違ったりすることもあるかも」

いつもの様子に戻って、デザートを食べ始めた。

「そうなんだ。私、本社の人しかほとんどわからないから」

さっきの様子が変って思ったのは気のせいみたい。

「ほら、千波。早くしないとアイスが溶けちゃうよ」

お皿を見ると指摘されたとおり、バニラアイスが溶け始めている。

「本当だ。急いで食べなきゃ」

私はスプーンを持つと、急いでデザートを口に運んだ。
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