強引上司の恋の手ほどき
ここでやっとなんだか様子がおかしいことに気がついた。いくら金曜日の駅だからって、こんなに人が溢れかえるものだろうか。

「菅原。電車止まってるぞ」

そう言われて、大きな課長の脇から顔を出して電光掲示板をのぞくと、そこには“運休”という文字が赤々と掲示されていた。

「運休って、電車動いてないってことですよね？」

「あたりまえだろう……電気系統のトラブルらしい」

「じゃあ、私たち……」

課長の顔を見上げた。

「帰れないな」

ど、どうしてこんな時に冷静でいられるんだろう……。

「あ、そうだ。飛行機！」

「週末に席が取れると思うか？」

確かにそうだ。それに今から空港に行ったところで最終に間に合うかどうかさえわからない。

「どうしよう……どうしたらいいですか？」

慌てている私に対して課長はあくまで冷静だ。

「泊まるしかないだろうな。ちょっと待ってろ」

するとコートのポケットからスマホを取り出すと、素早く操作している。そして直ぐに電話をかけると、空き部屋の状況を把握していた。

そんな急に泊まりだなんて。
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