強引上司の恋の手ほどき
「菅原が開けて」
鍵は私が持っていたのだから、そうするのがあたりまえだけど、課長はあえてそう言った。
それは私に最後の覚悟をするようにという意味だったのだと思う。
——ここから先は引き返せないよ。
まるでそう言われているようだった。
私が鍵をあけると、先に私に入るようにと促した。
「し、失礼します」
覚悟はしたけれど、緊張してないわけじゃない。そんな私を見て課長は肩を揺らして笑っている。
「もっと緊張してもいいぞ。今から“取って食う”つもりだからな」
課長はふたりぶんの荷物をソファに置いた。
部屋は、モダンな造りで大型のテレビにソファとテーブル。それと部屋の中で一番存在を主張している大きなベッドがあった。
その場で立ちすくんでしまった私を課長が優しく抱きしめてくれる。
「どんだけ緊張してもいい。それが今の素直な気持ちなら隠さなくていい。どうせあと少ししたら、そんなもんどっかにいっちまうんだからな」
自分を装わなくても、無理しなくてもいい。そう言われているようで私は課長の背中に腕を回した。