強引上司の恋の手ほどき
「ブッ……。あはは。お前全部顔に出すぎだ」

私は両手で顔を慌てて覆った。

「緊張してるのに、笑わないでください! 課長は慣れてるかもしれないけど、私ははじめてなのに」

「はじめてだよ」

思いがけない言葉に、私は自分を覆っていた手をどけて目の前の課長を見る。

「こんな風に手を出すまで、こんなに時間がかかった女はじめてだ。それぐらい絶対欲しかった。もういいだろ……おしゃべりはおしまいだ」

しかし彼がキスしようと迫ってくるのを、私は阻止した。

「それって、課長が私のこと好きってことですか?」

これだけはきちんと聞いておきたい。もちろん今こうなってるのは、私の意思で選択だから後悔なんてない。

だけど課長の口からちゃんとした言葉が聞きたい。

「お前、この状況で男を我慢させるとか、なんの拷問だよ」

視線を私から反らせて、ぼそっとつぶやいた。

「いや、ちゃんと言ってなかった俺が悪かった」

一度そらされた視線が私へと戻ってきた。

「好きだ。千波……もうずっと前から」

「ずっと前?」

「それについては、また後で。もう限界なんだよ、お前の中に入りたい」

彼が私を好きでいてくれた。そして欲しいと言ってくれている。

「郡司さん……お手柔らかにお願いします」

何度か課長の名前を呼ぶことを妄想していたけれど、思ったよりもすんなりと言葉に出来た。

「そんな可愛いこと言ってると。手加減できるわけないだろうが」

そう言った彼の唇が、私の唇と重なったと同時に私たちははじめてひとつになったのだった。
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