強引上司の恋の手ほどき
いつしか俺は、彼女の毎朝の鼻歌を楽しみにしてそして気がつけばその日一日脳内でその歌を再生しているようになっていた。

すぐに彼女がどこの部署にいるのかも分かった。経理課に行くとすぐにカウンター対応をしてくれるのが彼女、菅原だった。

自分の仕事の手を止めるのを嫌がる奴が多い中、後輩がいたとしても率先して笑顔で対応してくれる。処理も的確であの調子はずれの歌から想像できない仕事ぶりだった。

そして経理課へと異動になったときにも、変わらぬ笑顔で俺を迎え入れてくれた。

それから一年。仕事と俺の本当の目的を果たすために奔走しているうちに彼女が他の男のものになっていた。

上司面して相談に乗ってやるなんて言ったけれど、本当は心穏やかに聞いていられなかった。

『お前の悩み、俺が全部解決してやるよ』

部下思いの良い上司を演じながら、つまらない男から彼女を奪う決心をしていた。
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