強引上司の恋の手ほどき
しかし……思っていたよりも菅原は難攻不落だった。

彼女の美点である“まじめ”が恋愛にも大きく影響を及ぼしていた。

必死で中村を好きでいようとする姿は、自分で自分の首を締めているように俺からは見えた。

恋愛に経験が浅いんだから、優しくしてそばにいればなんて簡単にこちらになびくだろうなんて考えていた俺が甘かったのだ。“真面目”もここまでとは。

まさかこの俺が、好きな女が他の男のために作った弁当を食う事になるなんて、人生なにがおきるかわからない。

屋上から降りて、コーヒーを買いに休憩ブースへと向かう。するとそこには先客がいた。

「お疲れ様です。課長がどうしても私に奢りたいっていうなら、もらってあげますよ」

「それは、やんわりとしたユスリだよな?」

同じ経理課の金子は経理課の古株で頼れる存在だった。ものいいや態度はでかいが、仕事は正確で早く他の社員からの信頼もあった。

俺は、金子のリクエストに答えて、自販機に金を入れる。すると「ありがとうございまーす」と言いながら、遠慮もなくボタンを押していた。
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