強引上司の恋の手ほどき
ちょっと残念だけど、会えないわけじゃない。郡司さんのことだから、さっさと用事を済ませて私の元へと来てくれるはずだ。

そしてその日定時を迎えると、郡司さんはすぐに帰る準備を始めた。コートを羽織ると、また仕事をしている私の後ろを通過するときに、頭をポンっと叩いてからフロアを出た。

それが「また、後で」といわれているような気がして、嬉しくなって思わずにやけてしまう。

「仕事中に、ニヤニヤしないでくださーい」

美月さんに指摘されて、顔を元に戻した。

「すみません」

「まぁ、いいけど。チョコももらったことだし」

ここにきて、あの義理チョコが功を奏するとは思ってもみなかった。

「それに、千波が幸せだったらそれでいいよ」

パソコンの画面を見ながらだったけれど、美月さんの思いのこもった言葉に胸が震えた。

「ありがとうございます。なんだか色々心配かけてしまって」

中村くんとのことは、色々と話しを聞いてもらい心配をずいぶんかけたと思う。言葉はきつい美月さんだったけれど、真摯に向き合ってくれていた。

そして誰よりも、私と郡司さんがお付き合いをするようになったことを喜んでくれている。
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