強引上司の恋の手ほどき
歩きならが、色々と妄想が広がる。

なにつくろうかな……。シフォンケーキにチーズケーキ、シュークリームなんかも作ってみたいな。

上手にできたら、郡司さんに食べてもらおう。

相手がいると途端に料理もお菓子作りも楽しくなる。それを教えてくれたのも郡司さんだ。

冷たい風が頬をさすれけれど、私の足取りは軽く駅前に向かっていた。

ふと反対側の歩道を見ると、そこに見慣れたスーツをみつけて声をかけようとする。

けれど、私はすぐにそれを止めた。

彼のすぐ隣には、女性の姿があったからだ。

あの人……まえも一緒にいたショートカットの人だ。

そういえばこの間目撃したときも、このカフェの出口にふたりは立っていた。

どうしたらいいのかわからず、立ち止まったままふたりを見つめていた。郡司さんの手には有名な洋菓子店の袋が握られていた。たぶんチョコレートが入ってるんだろう。

私と会うのを遅らせてまで、彼女に会う理由はなんなの?

仕事の関係者? でもチョコレート渡す? それにこんな場所で会うだろうか会社はすぐそこだ。

嫌な想像しか思いつかずに、私は彼に見つからないようにその場を立ち去った。
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