強引上司の恋の手ほどき
翌日——。

嫌でも、顔をみないといけない。それが社内恋愛のつらいところ。

いつもよりも一本電車を遅らせたが、そんなことをしてもどうにもならない。少しばかり遅れて、いつもの朝の準備をはじめた。

あれから、電話もメールもなかった。私からも、なんにもしていない。

どんな顔してフロアに入ればいいんだろう。

結局私はほかの経理課のメンバーが出社するまで、給湯室で時間を潰した。

お陰で、今日の給湯室は大掃除の次の日のように綺麗だった。

これ以上遅くなると、仕事に差し支える。

始業時間までにデスクで色々と準備もしなければならない。私はキョロキョロと廊下を歩いて、開いている扉から中を覗きこんだ。

やっぱり……いるよね。まもなく仕事が始まる時間だからいて当たり前だ。しかし、彼がいると思うと、なかなか足を中に踏み込むことができなかった。

「なにやってるんスか?」

「ひゃあ! さ、坂田くんっ。急に声かけないでよ」

背後から声をかけられて、驚いて声が上ずってしまう。
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