強引上司の恋の手ほどき
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「で、その場から逃げ帰ってきたってわけ?」
「逃げたわけじゃないです。好きにすればいいって言われたから、好きにしただけで」
「あ、そう」
美月さんは缶ビールを片手に、ソファの上であぐらをかいていた。
旦那さんが出張中だという美月さんは、私の相談を快く引き受けてくれて、自宅マンションへと招いてくれた。
私も渡された缶ビールに、ちびちびと口をつけ、バレンタインの日の出来事を話す。
「ようするに、課長が千波の知らない女と会ってたってことだよね。一度ならず二度までも」
「まぁ、そういうことです。今回は、私との約束を遅らせてまで会ってたんですよ」
ついつい口調が愚痴っぽくなってしまう。
「そうか……まぁ、それはアンタを部屋に泊めるつもりだったんだから、向こうの用事を先に済ませるのはわかるけど。つーか、課長もかわいそうだな。やる気満々だっただろうに……バレンタインにひとりで処理——」
「美月さんっ!」
話が脱線しそうになって慌てて軌道修正する。