強引上司の恋の手ほどき
***

それは、二週間ほど前中村くんの誕生日のことだった。

事前に泊まれる準備をしてほしいと言われて、私もその意味を十分に理解してその日に臨んでいた。

食事を終えて、ホテルの最上階のラウンジに誘われた。

彼の誕生日だというのに、全部彼任せだ。

そこでベタだとは思ったけれど、誕生日プレゼントのネクタイを渡した。

「あの、これ気に入ってくれるといいんだけど」

「プレゼント? ありがとう。うれしいな」

「お誕生日おめでとう」

笑顔で受けとってもらえて安心した。

「次なにか飲む?」

え……それだけ? いろんな店を探し歩いてやっと中村くんに似合うネクタイを見つけた。

どんな反応を見せてくれるだろうかと考えながら、ワクワクしながら選んだのに。

「あ、いえ。もうちょっとしてから頼む」

「千波は、お酒弱いもんね」

そう言って私が渡したプレゼントをそのままテーブルの端においた。

中を見てもくれないんだ……。楽しかったプレゼント選びの記憶がガラガラとくずれおちるような気がした。

「もうお酒はこれくらいにして、部屋にいこう?」

肩を抱かれて、耳元でささやかれた。

緊張で体がこわばったけれど、私は首を縦に振った。

そして彼の用意した部屋で順番にシャワーを浴びた。

大丈夫……大丈夫。みんなやってることなんだから。

自分にそう言い聞かせて、先にシャワーを浴びた中村くんの待つベッドへと向かった。

抱きしめられて、キスをして……
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