強引上司の恋の手ほどき

到着したのは、高台にある公園だった。一部が展望台になっていて遠くまでよく見渡せる。

郡司さんは車を停めると、助手席まで回ってくれてドアを開けてくれた。

「ありがとうございます」

差し出された手をつかむと、ぎゅっと握ってくれる。この暖かい手が私は大好きだ。

「寒いだろうから、これ」

自分が巻いていたマフラーを私の首に巻いてくれる。急に彼の匂いに包まれて、胸がドクンと音をたてた。

展望台の手すりまで歩くと、ふたりで曇り空の下の街を眺めた。

彼の隣に立って、同じ方向を眺めた。

「ここは、小さいころ親父がよく連れてきてくれたところなんだ。ほら、ちょっと見えにくいけど、あそこにある高いビルわかるか? あれはが日芝だ」

「はい。私も知っています」

彼が指差す方向を見る。そこにはここからでもわかるほど一際高いビルがあった。

「親父は本当に家庭を顧みない男で、遊園地や動物園に連れて行ってもらったことも、運動会や参観日に来てくれたこともなかっった。そんな親父との唯一の思い出の場所がここなんだ」

遠くに見える日芝のビルを見ながら、郡司さんは話をしている。
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