強引上司の恋の手ほどき
「いや、お前は今から来る俺が注文したコーヒーを飲んでから帰れ。俺たちが先に帰る」

「え? だって二人分も私飲めない」

「いいから。ほら、千波立って。行くぞ」

「あ、はい」

いきなり手を引かれて、ずんずん歩き始めた彼に早足でついていく。

私は後ろを振り返り、美優さんに頭だけを下げた。

郡司さんは私を地下の駐車場につれてくると、一台の黒いSUV車に乗せた。

「あの、これって郡司さんの車ですか?」

「あれ、お前初めてだったか?」

「はい」

はじめて結ばれてから、まだ一ヶ月も経っていない。郡司さんについて知らない事のほうが断然多いのだ。

そして、今日はじめて聞かされた彼の置かれている立場についても……。

「もう少し待ってくれ、俺の話をちゃんと聞いて欲しい」

そう言ったっきり郡司さんは、それ以上はなにも言わずにまっすぐ前を見て運転している。私も、彼と同じようにまっすぐ前を見つめた。
< 209 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop