強引上司の恋の手ほどき
***

時間稼ぎもいつまでもつか……。

「はぁ……。どうして出来ないんだろう。みんなが出来ることなのに」

私だって彼の腕の中で目覚める朝を夢見ないわけじゃない。正直、長い間夢みすぎていて他の誰よりもその願望が強いのかもしれない。

二十七歳になるまで、恋愛処女を貫いてきた私にこの答えを導き出せるほどの経験はない。

答えの出ないことにいくら悩んでも仕方がないのだけれど、それでも悩まずにはいられない。

エッチのことだけじゃなくて、デートのときやちょっとした会話で感じる彼との価値観の違いをいつになったら感じなくなるのだろう。

いつか中村くんをもっと理解したらなくなる?

体を重ねれば、もっと彼のことを知ることができる?

私こじらせた初恋は一体どこに向かっていくのか、今日も私は頭を悩ませたのだった。

考えすぎても仕方ない。とりあえず明日もう一度謝らないと。

無事に部屋に到着たことと誘いを断ったことを再度メールで謝った。しかし、お風呂に入った後もベッドに入ってからも返信はなく、結局私はスマホを握りしめたまま眠ってしまった。

次に彼とコンタクトがとれたのは、翌日出社した後だった。

給湯室の掃除を済ませて外にでると、同僚の営業課の社員と楽しそうに話をしているところに出くわした。
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