強引上司の恋の手ほどき
「千波……あ、ごめんちょっと先行ってて」

同僚にそう言うと、私の元に駆け寄ってきた。

「メール返信できなくてごめん。気がついたの朝でさ、バタバタしてたら返信できなくて」

何事もなかったかのように言われて、拍子抜けする。もっと気まずくなるかと思っていたのに。

「あの、気にしないでください」

「じゃ、俺急いでるから、いくね」

私の肩にポンっと手を置いて去っていく中村くん。

さっきまで悩んでいた私とは裏腹に、中村くんは清々しい笑顔でその場を去っていた。

私を大事に思ってくれている。

でも今日も彼の首元に、私のプレゼントしたネクタイはなかった。
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