強引上司の恋の手ほどき
「あーーー! お伴させてもらいます金子様」
「そこまで言うなら仕方ないですね。ついてきてください」
カツカツとヒールで水たまりを避けながら歩く美月さんの後を私と課長が追う。
「なぁ、菅原あんな人と同じ部署で働くの大変じゃねーの?」
小声で話掛けてきた。
「でも美月さん頼りになりますし。課長だって同じ部署じゃないですか」
「まぁ、そうなんだけどさ」
美月さんが振り返ってこそこそと話をしている私たちをひと睨みした。
「こそこそ話してないで、さっさと来なさい」
「はいっ!」
私と課長は勢い良く返事をして美月さんを追いかけたのだった。
到着した居酒屋は週末なので、私達みたいな仕事帰りのOLやサラリーマンでいっぱいだった。
三人すわれるテーブル席に案内されて、私と美月さんが並んで座り、目の前に課長が座った。
「とりあえずビールと、それから……」
美月さんがどんどん注文していく。
「あ、俺つくね食べたい」
「私も!」
私と課長の声に答えて美月さんが合わせて注文してくれる。
すぐにお通しと冷たいビールの入ったジョッキが運ばれてきた。
「おつかれー!」
ガチンとジョッキを合わせて乾杯した。そのまま口に運び乾いた喉を潤した。