強引上司の恋の手ほどき
「俺にそんなことするの、この会社で金子だけだぞ」

「そうですか? まぁ、確かに女子社員には人気ですからね。総務の誰かもかっこいいって言ってましたよ?」

美月さんはビールのおかわりとつくねを店員さんに注文しながら話を続けた。

「え、誰?気になる。菅原は知ってる?」

私にとっては初耳だ。首を左右に振った。

「あ、思い出したけどシャクに触るから教えてあげない」

「なんだよそれ!まぁいいけど」

ふてくされた様子の課長のもとにやっとつくねが到着した。

「正直こんなにチャラチャラしてんのに、どこがいいんですかね」

「ひでーあははは。金子さんにはかなわないな。ただみんなと仲がいだけだってば」

ひどいと言いながらも、ゲラゲラと楽しそうに笑っている。

まぁ、課長がモテる理由わからなくもないけど。

高い身長にスラっと伸びた足。少し色素の薄い柔らかそうな髪と人懐っこい瞳。笑った時に出来る笑い皺をみるとついつい心を許してしまう。

それに加えて仕事もできる。一昨年まで在籍していた営業課では営業売上がよく社長賞も一度受賞していたはずだ。

ヘッドハンティングされて、我が社へ来るまでは業界第一位の会社で営業をしていたのだから当たり前なのかもしれないけれど。

「ずっと気になってただけど、課長ってどうして経理課に異動になったんですか?」

あれだけ営業課で利益を生み出せるなら、そのまま在籍して実績を残すのが普通だ。

なのに裏方部門である経理部門異動するなんて事例あまりない。だからずっと不思議だったのだ。
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