強引上司の恋の手ほどき
「この味出せるなら、他の料理だって慣れればあっという間に出来るようになるさ」

駄目出しされたおかずも、パクパクと食べてくれている。

「それと、味見ちゃんとしろよ」

「はい」

見かけも味もとても合格点には至らないけれど、その日食べたお弁当はなにか特別な味がした。

ふたりのお弁当箱が空っぽになる。一緒に準備してあったお茶を飲みながら聞いてみる。

「課長は今まで作ってもらったお弁当で、なんのおかずが一番嬉しかったですか?」

実際男の人ってどんなのが好きなんだろう。

「ない」

「えー? 好きなおかずがないんですか?」

「違う。弁当作ってもらったことがない」

「えー!! 自分で社内一モテるって豪語してるのに?」

「悪かったな! こういうもんは、もらわない主義なんだ」

飲み終わったペットボトルの蓋を閉めると立ち上がって歩き出した。

「そういうのは、本命からしかもらわないことにしてる。後々面倒だからな。先、行ってるぞ。あとでゆっくりこい」

そう言い残すと、屋上を出て行った。

「モテる男は大変なんだ……。っていうか、いまだに本命にお弁当作ってもらったことがないってこと? 課長も結構苦労してるのかもしれないなぁ」

私はそのとき自分の恋愛能力の低さを棚に上げて、しなくてもいい課長の恋路の心配をしていた。
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