新選組と最強子供剣士
これは、何が起こってるんだ?


「おい、なにしてんだ!」


俺は自然と声をあげて言った。


だが、目の前で試合している奴らは見向きもしない。


机仕事を片付けた俺は、身体を動かすために道場に来た。


だが、目の前で起こっているこれは‥‥‥


「土方さん」


「おい佐ノ助、こりゃどういうことだ。何がどうなりゃ剣壱と斎藤が試合するんだ?」


「え、えーと、」


目の前で繰り広げられている攻防は、一見斎藤が押しているように見える。


だが‥‥‥‥それは違う


剣壱の奴、斎藤の動きを完全に理解してやがるな。


的確に剣をさばく動作は迷いがない。


斎藤の剣は既に見切られている。


試合に入る隙はなく、真剣な表情の斎藤と剣壱はどこか楽しそうだ。


いや、それよりも斎藤が押されてるだと?


パシン!


その音で、働いていた思考が停止した。


カランと音を立てて落ちる木刀。


斎藤の喉元に木刀を突きつけている剣壱。


試合が終わっても誰一人として声を出さなかった。


一番初めに声をあげたのは‥‥‥


「ありがとうございました」


木刀を下げ、頭を下げる剣壱だった。


『怖いと、素直に思いました』


不意に総司が言っていた言葉が頭を過ぎる。


「ありがとうございました」


斎藤が剣壱に向かって頭を下げた。


二人の表情はどちらも満足感で満ち溢れている。


俺は、とんでもない奴を新選組に入れちまったのかもしれない。


後悔しても、もう遅いか‥‥‥‥





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