帰り道



お風呂から出て居間に戻ると拓哉はテレビをつけたまま眠っていた。


平気なフリして笑っていたけれどやっぱり今日は疲れたよね。


雨に濡れたまま呆然と座っていた光景が頭に浮かぶ。


すごくすごく高島さんが好きだったんだね‥。



起こすことなんて出来なくてとりあえずテレビを消した。



あたしは拓哉の近くでまだ残っていた課題の続きをする。


耳に届く拓哉の優しい寝息がなんだか心地良くて 独りじゃないと実感出来てすごく嬉しかった。



課題も終わり日付が変わった頃に母親が帰ってきた。


この時間に居間にいるあたしに驚いた顔をして

更に拓哉がいることに気付いて『あら拓哉くんが家に来るなんて久しぶりじゃない』なんて言ってすぐに自分の寝室に行ってしまった。



あたしは小さな声で

「おやすみ、拓哉」

と呟いてそっと毛布をかけてあまり音を立てないように居間を出て電気を消した。



自分の部屋に行ってベッドに横になる。


いつもはハルのことを考えるけれど今日は拓哉が今だけでもいい夢が見れますようにと願いながら眠りについた。
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