Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
「もう……いいじゃん。やめようよ、もう。本気じゃないくせに。事情は分かるけど、好きでもない女嫁にしたって絶対にあとから後悔するよ!?」
「おまえ、まだそんなこと言うんだ」
無表情のままじっと私を見下ろす永瀬の視線に恐れを感じて後ずさる。
傘の中を出れば一瞬で全身が濡れてしまうほどの大雨。遠くの方で雷が鳴る音がする。全身が水浸しになって、投げやりな気分になった私はぎゅっと手を握りしめて口を開いた。
「そうだよ、困るよ。私今、仕事楽しいし……そうだ! 今日だってさ、室長に呼び出されて大阪に行かないかって言われたの。旅行で一緒だった社長が、ぜひ私を本社に呼びたいって言ってるらしくって私行こうかなって思ってる」
「ふーん」
「仕事内容は、デスクワークメインになるみたいだから正直今の方が好きだけど……で、でも、チャレンジしたい気持ちもあるし……だから私」
傘を手放した永瀬がじわりと距離を縮めてくる。そして同じように雨に濡れた永瀬が目前に迫る。
「大嫌いなデスクワークに逆戻りまでしてでも、本社に行きたい理由ってやっぱアレ?」
「……え?」
アレって……? 見当のつかない私は呆然と永瀬を見上げる。
すると突然手を取られて引かれた。
全身を打ち付ける雨が止んだと思ったら、自分の頭の上に屋根があって目の前には見覚えのある風景。永瀬の自宅アパートだ。いつの間にか目前にまでたどり着いていたらしい。ぼーっとしている間に階段下で、壁に背中を押しつけられる。
「あんな優しいだけのフラフラした男、どこがいいんだよ」
「な、何を言ってるの……?」
何を言っている? その言葉が出たと同時に5年前に本社へ転勤になった元彼の存在を思い出す。
「仕事に打ち込んでいたのは、やっぱ、アイツを忘れようと寂しさを紛らわせるため?」
「ぜ、全然ちが……」
元彼のことなんて、別れた直後に泣いて以来、思い出したこともほとんどなかった。仕事が忙しくなって寂しい思いをする暇もなくて……。でも、それってただ仕事が忙しかっただけなのかな。
「どうすれば俺のもんになるの?どうすれば本気だと信じる?」
近距離で見下ろされて、恐怖と息苦しさを感じてうまく言葉が出てこなかった。
本気……なの?
だってこの間までふざけてたじゃない……
互いの身体を流れる水滴がポタポタと落ちて地面を濡らす。
激しい雨音と雷の音が余計に私の胸の鼓動を早くする。
「お願い、離して……!」
「おまえ、まだそんなこと言うんだ」
無表情のままじっと私を見下ろす永瀬の視線に恐れを感じて後ずさる。
傘の中を出れば一瞬で全身が濡れてしまうほどの大雨。遠くの方で雷が鳴る音がする。全身が水浸しになって、投げやりな気分になった私はぎゅっと手を握りしめて口を開いた。
「そうだよ、困るよ。私今、仕事楽しいし……そうだ! 今日だってさ、室長に呼び出されて大阪に行かないかって言われたの。旅行で一緒だった社長が、ぜひ私を本社に呼びたいって言ってるらしくって私行こうかなって思ってる」
「ふーん」
「仕事内容は、デスクワークメインになるみたいだから正直今の方が好きだけど……で、でも、チャレンジしたい気持ちもあるし……だから私」
傘を手放した永瀬がじわりと距離を縮めてくる。そして同じように雨に濡れた永瀬が目前に迫る。
「大嫌いなデスクワークに逆戻りまでしてでも、本社に行きたい理由ってやっぱアレ?」
「……え?」
アレって……? 見当のつかない私は呆然と永瀬を見上げる。
すると突然手を取られて引かれた。
全身を打ち付ける雨が止んだと思ったら、自分の頭の上に屋根があって目の前には見覚えのある風景。永瀬の自宅アパートだ。いつの間にか目前にまでたどり着いていたらしい。ぼーっとしている間に階段下で、壁に背中を押しつけられる。
「あんな優しいだけのフラフラした男、どこがいいんだよ」
「な、何を言ってるの……?」
何を言っている? その言葉が出たと同時に5年前に本社へ転勤になった元彼の存在を思い出す。
「仕事に打ち込んでいたのは、やっぱ、アイツを忘れようと寂しさを紛らわせるため?」
「ぜ、全然ちが……」
元彼のことなんて、別れた直後に泣いて以来、思い出したこともほとんどなかった。仕事が忙しくなって寂しい思いをする暇もなくて……。でも、それってただ仕事が忙しかっただけなのかな。
「どうすれば俺のもんになるの?どうすれば本気だと信じる?」
近距離で見下ろされて、恐怖と息苦しさを感じてうまく言葉が出てこなかった。
本気……なの?
だってこの間までふざけてたじゃない……
互いの身体を流れる水滴がポタポタと落ちて地面を濡らす。
激しい雨音と雷の音が余計に私の胸の鼓動を早くする。
「お願い、離して……!」