Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~
 口を開いた一瞬の隙だった。
 視界が暗くなって突然唇に何かが触れた。ひんやりとした感触とほんのり雨の味。少ししてキスをしてるんだと意識が働いた時、はじめて抵抗を見せる。
 でも身体はコンクリートに押し付けられ手は拘束されている。力で抑え込むような強引なキスになす術がなかった。

「やっ……んん……っ」

 逃げようとすればするほど深くなって呼吸すら奪われる。
 苦しくなって抵抗をやめると必要なだけの酸素はもらえるようになったけどキスは終わらなかった。
 角度を変えて何度も舌を絡めとられる。眩暈を起こしそうなほど濃厚なキスに頭がぼうっとして全身の力が抜けてくる。
 こんな、全身を支配されるようなキス生まれてはじめてだ。
 私を拘束する力強い腕と強引な唇に、また永瀬が男であると身を持って感じる。まただ。胸が苦しくなって、全身が熱くなって……

「……やっ……やめてよ!」

 自分の意思、感情、すべてがグラグラと揺れ動く。これ以上惑わせないで。
 相手の力が緩んだ一瞬の隙をついて逃れると、そのまま走り去った。
 自宅に入って一目散に洗面所に向かう。
 全身は水浸し、目も頬も真っ赤で髪が顔中に張り付いて化粧は崩れている。
 酷い顔……
 こんな顔、見られたくない。唇から逃げ出した瞬間、咄嗟にそう思ったんだ。

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