恋する時間を私に下さい
『良かった……』

それを言うのが、精一杯だった。

『好きです』も『ありがとう』も、何も言えなかったけど……



『後悔はありません…。こうして…いい夢も見せてもらえたから……』


寝起きの顔で仕事へ来る礼生さんを見るのが、一番好きだった。
無防備で飾らなくて、彼らしくて…。

『きゅぅぅん…』と鳴る音を聞きながら、ドキドキと胸を弾ませて仕事ができたあの時間……


私の『恋する時間』だったーーー


その時間に浸れたことが……何より一番嬉しかったーーーー




(できればもう一度…あの時間に戻りたかったけど……)





『……いいのかい?』

気まずそうに聞く声の主に微笑んだ。

この人に迎えに来てもらえるとは、思ってもいなかった。


『…いいです…私はもう……精一杯のことをしたから……』


望みの全ては叶わなかったけど、悔いは残ってない。
全力で礼生さんを助けた。
 
それだけで……十分………




『…じゃあ行こうか…』


伸ばされた手を躊躇しながら掴まえた。
同じ手の感触にホッとして、その後ろ姿を追った。


一人じゃないんだ……と、改めて意識した。

光の中に向かって、進み始めたーーーーー

< 128 / 206 >

この作品をシェア

pagetop